【NA→ SA会議レポート】2021.8.11高橋大就氏「サヴァイバルな俺の人生」

◆本イベントは東日本大震災の月命日である7月11日(日)に開催された【Next Action➔ Social Academia Project】のレポートです。震災から約10年を迎え、新たにゴールデンエイジと呼ばれる16歳から29歳までの若者が次の10年の復興を実行していくためのプロジェクトです。

◆イベント当日は、起業と移住を通したインプットと今自分にできることを考えるアウトプットをテーマとした講演が行われました。講演者として、一般社団法人東の食の会専務理事・一般社団法人NoMaラボ代表理事の高橋大就さん、ゲストとして株式会社ワンダーファーム代表取締役の元木寛さんにお話しいただきました。講演後に質疑応答を行い、参加者からの質問や悩みにお答えいただきました。さらに講演後オンライン二次会を開催し、ブレイクアウトルームに分かれ「こんなことにチャレンジしてみたい」「こんなことが自分にはできそう」というテーマで話し合いました。1人1人が自分と向き合えるイベントとなりました。

日時:2021年8月11日(日)18時30分〜20時00分(講演) 20時00分~21時00分(二次会)
場所:ZOOM
講演者:一般社団法人東の食の会専務理事 一般社団法人NoMaラボ代表理事 高橋大就さん
ゲスト:株式会社ワンダーファーム代表取締役 元木寛さん
司会:岩田萌さん(ソフトバンク株式会社 CSR本部長期インターン)
参加者数:20名

当日進行

1. 開会の言葉
2. 本イベントについて
3. 高橋さん講演
4. 元木さん講演
5. 休憩
6. 質疑応答、感想共有
7. 事務連絡・写真撮影
8. 閉会の言葉
9. 二次会:ディスカッション、アクションプランの共有(希望制)

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1. 開会の言葉
ソフトバンク株式会社 CSR本部長期インターン生の菅野采颯さんより開会宣言が行われました。

2. 本イベントについて
株式会社小高ワーカーズベースの野口福太郎さんよりイベントの目的や当日の流れについて説明がありました。

3. 一般社団法人東の食の会専務理事 高橋さん講演
高橋大就さんより「サヴァイバルな俺の人生」というテーマでご講演いただきました。

以下内容

<自己紹介>

私が高校2年生の時、北朝鮮が日本海にミサイルを発射する出来事があった。日本全土が射程圏内ということに驚き、危機感を抱いたため外務省に入る。外務省時代には日米の安全保障を担当していた。

私がマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社した三年後に東日本大震災が発生しすぐ東北へ行き緊急支援に携わった。持続的に東北・福島の農業や漁業を回復させたいと思い、東の食の会を設立。以来、東北の食産業振興を行ってきたが、福島県浜通りでも何かしないといけないと思い、これからどう生きていくか考えた際に、避難指示対象となった12市町村に貢献できるような人生を送ると決め、福島県浪江町に移住した。

<なぜ地方ビジネスの可能性が大きいのか>

地方ビジネスの可能性は大きい。L型(ローカル)事業は伸びしろと可能性がある上、雇用を産むことで富の分断を防げる。また、きちんとターゲットを絞り、個性のあるビジネスでは、中小ビジネスの方が大規模ビジネスより顧客満足度が高いというデータがある。今の世の中は地域のスモールビジネスに追い風が吹いている。

コトラーは「マーケティング3.0」で、より良い社会を作るためのビジネスでないと評価されない社会になった、と唱えた。さらに「マーケティング4.0」ではデジタル・マーケティングにより顧客とコミュニティとしてつながる企業が求められている、と指摘した。これも地方ビジネスにとって追い風である。

<ソーシャルビジネスの建付け>

一般的なビジネスに用いられる3C分析(顧客・自社・競合)は、ソーシャルビジネスやまちづくりには当てはまらない。そこで自分でフレームワークを考えたのが3S(社会・自分・関係者)。社会全体の課題・ニーズと合致しているか、ステークホルダーそれぞれの視点から見て成り立つモデルになっているか、そして、一番大事なことは、自分の情熱がそこにあるかどうか。

マーケティングについては、「左脳と右脳と心を撃ち抜く」ことが大事。左脳には機能的価値を、言語的なアプローチで伝える。右脳には感性価値を、ビジュアルにより瞬間的な形で伝える。、そして心には、ストーリーや、どのような社会課題の解決に役立つかという情緒的価値を訴える。。

例えば「サヴァ缶」では、左脳にはサバのダイエット効果や骨を丸ごと食べられる、簡単に食べられるという機能的価値。右脳には斬新なデザインで手に取ってもらう。よく見ると、裏には震災復興に役立つことが記載してあり、心にも訴えることで他の缶詰より高価でも継続的に購入いただけることを狙った。

浪江に移住した理由は「責任」と「ワクワク」。この地域の課題は「福島の課題」ではない。ここで起こったことは、この国の私たちの積み重ねてきた選択の帰結であり、この国全体の課題。まして、東京電力福島第一原発で作られた電力が供給されていたのは、東北地方ではなく、東京首都圏。首都圏に住んできた人間にとって他人事であるはずがなく、自分事としてこの地域に関わらなければと思った。

より大きな理由は、この浪江町の方々がとても前向きでオープンで、チャレンジ精神に溢れていて、自分もこの人たちとこの町で、コミュニティを再生し、ワクワクを産み出すことに一緒にチャレンジしたいと思ったから。

ゴールデンエイジへの皆さんに伝いたいことは、「Ideas have no value」。アイディアは実行されなければ価値はないということ。アイディアは沢山あるが実行する人は少ない。とにかく皆さんには実行して欲しい。

4. 株式会社ワンダーファーム代表取締役 元木さん講演
元木寛さんより「起業」についてご講演していただきました。

以下内容

福島県双葉郡大熊町出身。いわき市の福島工業高等専門学校電気科を卒業後、JR東日本に入社。その後JR東日本を退職し、義父と共に農業法人とまとランドいわきを立ち上げる。東日本大震災後、2013年株式会社ワンダーファームを設立し、「全国農業コンクール」農林水産大臣賞、同年にトマトの「農林水産祭」天皇杯を受賞。その後講演の依頼が30件以上きたが、あるとき自分のやりたいことではないと感じた。

私が地方起業をしたきっかけは、自分のライフスタイルを重視したことにある。私の妻の実家が農家をしており、義父に誘われ福島で農業を始めた。国内初のオランダ式トマト栽培を立ち上げ、そこから農業人生が始まった。同時に趣味のサーフィンもできるため地方だと時間と心に余裕ができた。いつからか地方の良さを多くの方々に知ってもらいたい、地方に来てもらいたいと感じるようになった。

新型コロナウイルスによるパラダイムシフトやリモートツールの拡大・SNSの発達などデジタル革命が起きた。それにより都市と地方の役割が大きく変わったと思う。一般的にビジネスは東京のような都市でないとできないと思われがちだが、ライフスタイルの変化により、地方の方がビジネスの可能性があると感じる人が増えた。高橋大就さんのような優秀なビジネスパーソンほど地方をみていると思う。都市経済だけではなく地方経済が発展しないと日本の経済は元気ならないと考えているため、地方のビジネスを重要視している。

近年発展しているSNSなどの便利さを手に入れると、人間性が失われていると感じている。ある研究者によると人間は自然の中にいることで人間性が回復し、クリエイティビティーが磨かれると言っている。地方に行けば行くほど自然が多いため、人間性を持ちながら感性を磨きクリエイティビティーに仕事をするには地方が適しており、ビジネスも成功するのではないかと考えている。

5. 休憩

講演後に5分間の休憩を取りました。

6. 質疑応答、感想共有

講演の感想共有や、質問等を25分間行いました。

7. 事務連絡・写真撮影

今後のイベント情報などについて株式会社小高ワーカーズベースの根本李安奈さんより説明がありました。
参加者で「Next Action➔ Social Academia Project」にちなんだ、矢印(→)のポーズで記念撮影を行いました。

8. 閉会の言葉

ソフトバンク株式会社 CSR本部長期インターン生の菅野采颯さんより閉会宣言が行われました。

9. 二次会:ディスカッション、アクションプランの共有(希望制)

講演終了後、希望の参加者と「こんなことにチャレンジしてみたい」「こんなことが自分にはできそう」というテーマで話し合いました。

◆事後アンケートより

以下抜粋

<高橋さんの講演の感想>

・地方ビジネスについて可能性があることや、東京との違いなど身近な人から話を聞いたことはあったのですが、著名な方の具体的な意見など知らなかったので、自信に繋がりました。また、大学でCSRについて学んでいるため、情緒的価値やストーリーの重要性についてとても共感しながらお話を聞いていました。本日は貴重なご講演をありがとうございました。

・浪江町が、町に対する当事者意識が高い人が多い、1人当たりのワクワク度が高い、という指標が凄く心に響きました。

・今のマーケティングは顧客ニーズだけでなく、やはり消費者と生産者のコミュニケーションは本当に大事だと感じました。日本の基盤は地方から始まるという話を聞いて、地方の衰退を我々が行動することで防止しないといけないと感じました。

<元木さんの講演の感想>

・素敵なお話をいただきありがとうございました!自然と近くにいるからこそ人間性やクリエイティビティが高まるというお話は、地方ならではの魅力だなと感じました。また、明確なビジョンがあればそのプロセスにおいて挫折することはないという言葉が心に刺さり、自分自身がどうありたいのか、どこに向かいたいのかをもっと言語化していこうと思いました。

・質問の中で大変なこともあったとおっしゃっていましたが、講演の中では、元木さん自身が本当にワクワクしていることが伝わってくるようなお話でした。人間力が大事というお話しもありましたが、こういうワクワクが伝えられる能力も人間力なんだろうなと感じました。

・頭で考えることももちろん大切だと思うが力技で生き抜く、失敗しても割り切る考え方はとても参考になりました。

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